損得で考える

子供たちが騒いでどうにもならないクラスがあるとします。

教師の多くの手を借りて、授業をしていますが、またすぐにうるさくなり、授業になりません。

そのたびに

「静かに」

「座って」

と、時には大きな声を出して子供たちを静かにしようとします。

でも、根本的な解決には到底及びません。

私は、こういう状態のクラスを何回となく、見てきました。

私が担任した学級では、子供たちは賑やかに活動していますが、私の話を聞かないという状態になることはありませんでした。だいたい、私は、クラスの核になる子供が聞いていればいいという考え方なので、全員が聞いていなくても、あまり気にしていません。

さて、こういう状態になったクラスの子供たちをどう考えるかです。

私は、

「このクラスの子供たちは、損得で考えないのか」

と思ってしまいます。

うるさくて、授業にならないとなれば、誰が一番損をして、誰が一番得をしているのでしょうか。

損をしている子供たちはわかりやすいです。

授業を真面目に受けようとしている子供たちです。その気で来ているのに、授業に鳴らないとなれば、どうしようもありません。

では、誰が得をしているのでしょうか。

それは、騒いで授業を妨害している一部の子供たちです。みんなが勉強しないことで、自分の相対的な地位を上げているわけです。たいした努力もしないで、自分の地位を上げるより、みんなの地位を下げることの方がずっと効果的だからです。

授業が成立しない状態は、この一部の子供たちの利益を確保することになります。

では、どうするか。

妨害している子供たちの得を奪うことです。逆に、被害を受けている子供たちの得を確保することです。このことの合意をクラスに作っていく。

「このままだと、真面目に勉強しようとしている人たちが損をしてしまう。それはいいことですか」

これで、真ん中にいる6割から、割が移動すれば、全体4割が合意したことになります。まずはここから始める。地道に続けて、1ヶ月後には全体の七割の合意を目指す。

教師と子供たちは戦ってはいけません。

あくまでも、クールに、同時に冷静に戦略的に動かなければだめです。

 

 

私は、今でも、クラスの中心にいるのは誰なのかを、毎日観察しています。

中心にいるのは、一人なのか、複数なのか、また、複数のグループなのか、対立する個人、グループはあるのか、男女の関係はどうなのか、毎日観察しています。

そして、中心にいる子供、グループとの対立を徹底的に避けています。

機嫌をとるこはしませんが、対立は避けます。

それくらい、子供たちが作っている集団の力は本当に恐ろしいものです。