卓見

私は、骨の髄まで『学び合い』の人間ですが、酒井式描画法にも魅力を感じています。

幸いなことに、酒井先生との長いお付き合いもあります。

今日、ある出来事で、酒井先生の言葉を思い出しました。

「子どもは、見て描くのではない。触って描くのだ」

例えば、大きな木を描かせるとします。

「よく見て描くのですよ」

「大きな幹ですね。大きな枝があります。葉っぱもいっぱい付いていますね。」

「枝が、重なっていますね。」

などなど、具体的な指示をして、子供たちにどのように描かせるのかを指示を重ねていきます。

酒井先生は、そうしないのです。

「大きな木を描かせるなら、大きな木を触らせる。あとは、教室でいい」

私も、大きな木を描かせるときに、大きな木を触らせて、あとは、教室で描かせました。今風に、写真など撮りません。子供たちは、自分が触った木の感触を頼りに描き進めるのです。

自分の顔を描くときも、鏡など用意しません。

「まず、自分の鼻をさわってごらん。どんな形をしているかな」

なんて、言うのです。しかも、逆さまに描かせるのです。

今考えると、まさに卓見です。この卓見に、20年以上気づかずに過ごしていました。

今日は、この言葉が

「あー」

という感じで降ってきました。

とてもいい気分でした。

酒井先生は、絵を描いている子供たちの様子をじっと見ていたのだろうと思います。

あの素晴らしい実践の数々を産んだ眼力と、子供たちの姿から学ぶ卓見に今更ながら感謝したいと思っています。