読解力

前項に続いて、本の話。

 

榎本博明著

教育現場は困っている

平凡社新書 2020年6月

 

 

前項の「AIに負けない子どもを育てる」は、読解力を6分野7項目に定義して、その能力を測ることで読解力を向上する方策を考えていました。

「教育現場は困っている」では、この読解力の低下を指摘しています。

教育関係の本を続けて読んだら、どちらも読解力が鍵でした。


『学び合い』の中で、この読解力をどのように向上していくのか、またその目的は何か、考えるべき材料はたくさんあります。
今まで、「読解力とは何か」を議論するだけで終わっていた時代がおわるかもしれません。読解力を定義して、数値化した研究が出てきたからです。
今後、読解力はこの定義を巡る議論になりそうです。

でも、この議論、宇佐美寛先生に強い影響を受けてきた私は、やっと宇佐美先生の研究に目合う実践が出てきたとも感じています。

 

 

例えば、「社会科見学」という作文を書くとします。

自分が見てきたことや聞いたこと、感じたことを書くわけです。

私は、こういう時に

「社会科見学を家の誰かに伝えるとして、書いてください。」

と、読み手を設定します。

書く内容は、読み手によって変化します。

伝言ゲームというゲームがあります。

短い文章を伝言していって、上手く伝わらないことを楽しむゲームです。

私は、「伝言ゲーム破り」をします。

状況や目的を設定すると、うまく伝わってしまうです。無目的に伝言する場合と、目的をもって状況を設定すると、伝わるのです。

コミュニケーションは、状況に縛られるのです。

当たり前の話です。

極端な場面設定かもしれませんが、結婚式と葬式では違うコミュニケーション状態です。ここまで、極端でなくても、日常的には当たり前の話です。

このコミュニケーション状態を無視して、コミュニケーションが成り立つかのような授業が不思議でした。

読解力の向上も、どういう目的でどういう相手に何をどのように伝えるのか、と考えればそれほど難しい事ではないと感じています。

やっと、読解力の研究が始まっていくような感じがしています。